きっかけはSNSでのちょっとしたやりとり
私の所属するスーパーでは、お客様との交流をSNSで広げていこうという試みが始まっています。 私は正直スマートフォンの操作は人並み程度にはできるのですが、パソコンを使ったSNS運営は苦手でした。 とはいえ、店長からは「もっとお客様との距離を縮めよう」と言われ、私を含めたスタッフ何人かで商品紹介や店舗の日常を発信していくことに。 そこで私も、慣れないながらもスマホで写真を撮り、コメントを書くようにしました。
ある日のこと。 SNS上で「いつも笑顔で素敵ですね。ぜひレジに並びたいと思います」といったコメントが寄せられました。 最初はなんとなく気恥ずかしかったのですが、メッセージを送ってくれた方がよくお店に足を運んでくださる40代後半くらいの男性のお客様だと気づきました。 いつも鯖の切り身がお好きなようで、魚コーナーでお見かけするときにもよく目が合っていたのを覚えています。
私はそのコメントへの返信として、「いつもご来店ありがとうございます。こちらこそ、お会いできるのを楽しみにしています」と送ってみました。 これが彼とのやりとりの始まりでした。
健康を気遣う日々だからこそ生まれた優しさ
最近は、年齢のせいもあり血圧がやや高めであることを気にしていました。 定期検診で「もう少し塩分を控えたほうがいいですよ」と言われたばかりです。 ところが、彼とSNSで言葉を交わしてからというもの、やたらと「こんなにドキドキして大丈夫かしら」と思うほど心がはずみ、血圧よりもときめきに意識が向くようになっていました。
あるとき、彼が私のレジに並んだ後、「今度、軽くお茶でもどうですか」と言ってくれました。 正直、その時は少し戸惑いました。 「私は67歳だし、あなたほど若い方に興味を持たれるなんてあり得ない」と思いながらも、なぜか彼の優しい口調や温かなまなざしを断りきれませんでした。
二人で巡る仙台の思い出スポット
私はこれまで仙台に長く住んできたこともあり、街のいろいろな場所に思い出があります。 子どもがまだ小さかった頃、家族で牛タンの名店を回ったり、青葉城址に何度も遊びに行ったりしていました。 そんな思い出の地を、今度は彼と一緒にめぐることになるとは想像すらしていませんでした。
ある日、休日に合わせて二人で仙台駅の周辺を散策することになりました。 最初は「若い人が集まるカフェには行きづらいな」と思っていましたが、実際に足を運んでみると、若い人だけでなくシニア世代もカフェを楽しんでいて、すんなり溶け込めました。
そこで何気なく昔の家族の話や、自分の健康のこと、それから子どもたちの独立後の生活などを話し合いました。 彼は私の年齢を気にするどころか、「今までの経験があるからこそ、話していてすごく落ち着きます。もっといろんなお話を聞きたいです」と言ってくれました。 正直、この言葉がどれほど私の心を救ってくれたか分かりません。
思わぬタイミングで花咲いた熟年恋愛
こうして一緒に過ごす時間が増えるたびに、私自身がどんどん積極的になっていくのを感じます。 一時期は「老後を静かに過ごせればいい」と考えていたのですが、この年になってまた新しい出会いや恋愛感情を楽しめるなんて夢のようです。
私にとっては、血圧や体力の問題を言い訳にして行動を先延ばしにしていた部分も正直ありました。 でも彼と話すうちに、「人生はまだまだこれから。やりたいことがあるなら挑戦していいじゃない」と思えるようになりました。
今後への期待と不安
もちろん不安がまったくないわけではありません。 子どもたちに「実はお付き合いしている人がいるの」と打ち明けるタイミングに戸惑っている自分もいます。 でも、やっぱり恋心は隠しきれるものではありませんし、いつかちゃんと伝えたいと思っています。
それに、健康上の理由で急に体調が悪化することもあるかもしれません。 そんなリスクを考えると、先のことを怖く感じることも正直あります。 けれど、彼は私の不安を丁寧に聞き取りながら、「一緒に支え合っていきましょう」と言ってくれています。 その言葉に、私はどれだけ安心していることでしょう。
これから先、歳を重ねるごとにできないことも増えるかもしれませんが、それでも穏やかで温かい日々を彼と一緒に築けたらと思っています。 まさか仙台でこんなふうに生き生きとした気持ちを取り戻せるとは夢にも思いませんでした。