山口で揺れ動いた私の70歳ロマンス

私は現在、70歳になります。
夫とは数年前に病気で死別し、今は山口の自宅でひとり暮らしをしています。
この家は昔からそこそこ大きな一軒家なのですが、私ひとりでは持て余してしまうので、最近はAirbnbを活用してゲストを受け入れることで生活費を補っている状態です。
年を重ねるごとに、寂しさも増していくのではないかと不安を感じていましたが、ゲストとのコミュニケーションが想像以上に楽しく、日々退屈することがありません。

そんな私ですが、70歳にして思いもよらない恋愛感情を抱いてしまいました。
まさかこの年齢で、再び誰かにときめく日が来るなんて、夢にも思っていなかったのです。
これは、山口の穏やかな風景と人との交わりの中で、私の心にそっと芽生えた新しい物語です。

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新しい日常の始まり:ゲストが運んでくれたときめき

ある日、Airbnbを通じて、50代半ばくらいの男性が山口を訪れました。
彼は海外出身の方をガイドする仕事をしているらしく、仕事の途中で山口に立ち寄りたいということで、私の家に数日宿泊することになったのです。
最初は正直、「あまり若い男性のゲストだと会話も弾まないかしら」と思ったり、「もしかして私の日常リズムが乱れないだろうか」といった不安がありました。

しかし、いざ会ってみると、彼はとても気さくで礼儀正しく、初対面の私にも丁寧に接してくれました。
仕事柄なのか、話題も豊富で、私が見たことのない世界をいろいろ教えてくれたのです。
私が台所で料理をしていると、「何かお手伝いすることはありますか」と声をかけてくれたり、山口の観光スポットを一緒に巡るよう誘ってくれたりもしました。

この頃から、なぜか胸がドキドキしている自分に気づきました。
「70歳にもなって、おかしなことを考えているわね」と自分で自分を笑い飛ばそうとしましたが、なかなかそのときめきは収まらないのです。

彼とのひと時が心を解きほぐしてくれた

翌日、彼は用事の合間を見つけて私をランチに誘ってくれました。
せっかくなら山口らしいお店がいいということで、おしゃれな和食店を訪ねることに。
そこでは地元の新鮮な魚介類を使った刺身定食があったので、私は塩分と糖分を控えつつも、栄養バランスはしっかり考えて注文しました。
会話の中で、彼が自分より年上の人と話すのが大好きだと教えてくれたのです。

「人生経験が豊富だから、とても勉強になります。
それに、どんな話もどこか深みがあって、聞いていて楽しいんです」と言われたときには、私の胸の奥に何ともいえない温かいものが広がりました。
家に帰ってからも、その言葉が頭から離れず、「私だってまだまだ捨てたもんじゃない」と思わずにはいられませんでした。

人は年齢を重ねると、どうしても自己評価が下がってしまいがちだと感じます。
夫を亡くし、子どもたちは遠方で暮らしている状況だと、ときに自分の存在価値がわからなくなることもありました。
しかし、彼との何気ない会話は、私の眠っていた自信や好奇心を優しく呼び覚ましてくれたような気がするのです。

一歩踏み出す勇気:山口ならではの絶景を一緒に

滞在3日目の夕方、彼が「もし時間が合えば、明日の朝、一緒に山口の絶景ポイントを見に行きませんか」と誘ってくれました。
どうやら仕事の都合で午前中は少し時間が空くというのです。
私もAirbnbの掃除や次のゲストの準備の合間を見れば行けそうだったので、思い切ってOKしました。

場所は、山口市内から少し離れた静かな丘。
朝日が差し込む時間帯に行くと、まるで雲海のように霞がかった光景が広がると聞いていましたが、実際に目にするとその美しさに言葉を失いました。
彼と並んでその景色を見ていると、まるで時が止まったかのように穏やかな気持ちになり、「いつまでもこの瞬間が続けばいいのに」と思ってしまったのです。

私たちは並んで風を感じながら、私が夫と過ごした日々や、彼が生きてきた人生観などを語り合いました。
一見すると年齢差があるように思えるのですが、それでも話していると心の距離がぐっと縮まっていくのを感じました。
私が「本当にこの年になって恥ずかしいのですが、あなたといると心が弾むんです」と素直に伝えると、彼は微笑みながら「年齢なんて関係ないですよ。
あなたの話をもっとたくさん聞きたい」と言ってくれました。

新たな扉が開く瞬間

それからというもの、私は朝起きるたびに心がはずんでいるのを感じました。
あの素敵な時間がもう一度味わえるように、何かきっかけはないだろうかと考えるようにもなったのです。
70歳という年齢で、まさか自分がこんな恋心を抱くことになろうとは思っていませんでした。

滞在最終日、彼は仕事の予定上、再び山口に来る機会があるかもしれないと教えてくれました。
私は何とかもう一度会えないものかと願っていましたが、無理に引き留めるのはよくないとも思い、心の中でもやもやしていました。
そんなとき、彼が「また近いうちに戻ってきますよ。
そのときにはぜひ、おすすめのYouTubeチャンネルを一緒に見させてください」と言ってくれたのです。

iPadでYouTubeを楽しむようになった私にとって、こんなにも自分のライフスタイルに興味を示してくれる人がいるとは思ってもみませんでした。
嬉しさのあまり、思わず目が潤んでしまったのを覚えています。

彼が去った後の日常と、私の決意

彼がチェックアウトした後の我が家は、いつもの静けさに戻りました。
でも、その静けさは以前のものとは少し違います。
私の心には、彼との思い出や、新たに芽生えた希望が確かに残っているのです。

改めて自分の人生を振り返ってみると、夫との思い出はもちろん大切にしていますが、夫がいなくなった今でも私が生きる理由、そして喜びを見出せる場所があるのだと実感しました。
毎日の血糖値管理や食事制限は地味な作業ではありますが、いつかまた彼と外食を楽しむために、もっと健康に気を配ろうと思えます。
Airbnbのゲスト受け入れも、ただの生活手段ではなく、私の世界を広げるための大切な手段だと感じられるようになりました。

それに、彼に教えられたように、年齢はただの数字に過ぎません。
いくつになっても新しい感情や人との交流を楽しめるのだと、今回の出会いが背中を押してくれました。
もし彼が再び山口に訪れてくれたときには、今度は私のほうから少し積極的に連絡を取ってみよう。
そう思うようになったのです。

心に春が訪れた山口の日々

70歳になった私が、再び恋をするなんて本当に不思議な気持ちですが、今はこの心の変化を素直に受け止めようと思います。
人生は長いようで短く、そしてやり直しがきかないからこそ、今ある時間を大切にしたいのです。
そのためには、健康面にも気を配りつつ、テクノロジーに助けられながら、これからも好奇心を忘れずに生きていこうと決めました。

山口という土地は、私に静けさと豊かな自然をもたらしてくれました。
そして、そこに集うさまざまな人々が私に新しい刺激を与えてくれています。
いつかまた、朝日の射すあの丘に彼と立ち、私の人生の次のステージを語り合える日を願いながら、今日もiPadを手に持ち、Airbnbの予約状況をチェックしています。

年齢を重ねてなお、心が弾むような出会いがある。
そんな奇跡のような出来事が、本当に起こり得るのだと、私は皆さんに伝えたいです。
そして私自身がそれを目の当たりにしている今、これからの毎日がどんなにか輝いて見えるかは想像に難くありません。

私の山口での新たな物語は、まだ始まったばかりです。
これから先、どんなドラマが待ち受けているのか。
楽しみでもあり、少し不安でもありますが、それも含めて「生きている」という実感に満ちています。
心に春を感じながら、また新しい日常を紡いでいきたいと思います。

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